腎臓が血液から老廃物や余分な水分を適切にろ過する能力を徐々に失う長期的な状態です。
定義
①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らかな状態(特に蛋白尿の存在が重要)。
②腎臓の働きの指標となるGFR(糸球体ろ過量)が、「60mL/分/1.73m2」未満である。
①、②のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する状態をいいます。
出典:「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」(日本腎臓学会編)
➡ 腎臓の働き
腎臓は非常に重要な臓器で、以下のような多くの役割を果たしています。- 1.老廃物の排出
- 2.血圧の調整
- 3.血液の生成
- 4.体液量・イオンバランスの調整
- 5.骨の生成
➡ 慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病の原因は非常に多岐にわたり、複数の原因によって腎機能が低下している場合もあります。 ☞<慢性腎臓病の原因について>➡ 慢性腎臓病のステージ
○腎不全保存期: 腎機能が低下しているものの、透析を受けなくてもよい状態。食事療法や薬物療法で進行を遅らせることができます。 ○末期腎不全(透析期): 尿毒症状が強くなり、透析療法や腎移植が必要な状態です。 ☞<慢性腎臓病のステージについて>➡ 慢性腎臓病の症状
初期の段階では症状がほとんどないこともあり、進行すると倦怠感、むくみ、食欲不振、高血圧などが現れます。 治療は腎損傷の進行を遅らせることに焦点を当てていますが、原因をコントロールしても腎損傷の進行を防ぐことはできない場合もあります。 ☞<慢性腎臓病の症状について>➡ 慢性腎臓病の治療と予防
○食事療法、血圧管理、薬物療法などで腎機能の悪化を予防しましょう。 ○早期発見と適切な治療が重要です。 ☞<慢性腎臓病の治療について>現時点では、腎臓の機能を回復させる特効薬は存在しません。
しかし、進行を遅らせることは可能です。
慢性腎不全の治療は、個々の症状や原因に合わせて選択されます
専門医による早期の治療と定期的なフォローアップが重要です。
治療の目的
治療には大きく2つの目的があります。 1.腎機能の低下をできるだけ抑制し、人工透析が必要な末期腎不全の状態にならないようにすること。 2.心筋梗塞や脳梗塞などの、心臓や脳の血管の障害を防ぐこと。慢性腎臓病ではこれらの病気を発症する確率が高い傾向にあります。
– 原疾患の治療が重要です –
慢性腎臓病の原因となっている病気が分かっている場合には、その治療をしっかりと行うことが最も重要です。 原因疾患の特定には腎生検などの検査が必要になることがあります。 入院が必要な検査ですので、協力医療機関に紹介し検査を進める場合もございます。 そのうえで、”糖尿病” など”生活習慣病” が背景にある場合には、食事療法や運動療法などで生活習慣を改善することが重要です。 伴わせて、必要であれば薬物治療を開始します。1.食事療法
○塩分制限: 高血圧を引き起こす余分な塩分を避けるために減塩が重要です。
高血圧は腎臓(特に糸球体)に大きな負担をかけるため、腎機能の低下を速めてしまいます。○カリウム制限: 高カリウム血症を防ぐためにカリウムの摂取量を調整します。
腎機能が低下すると体内のカリウムの濃度が高くなり(高カリウム血症)、不整脈などで突然心臓が止まってしまうことがあります。カリウムは生野菜や果物に多く含まれておりますが、適正量や許容量は人によって大きく異なります。 自覚症状はほとんどないため、定期的な血液検査によるフォローアップが必要です。○たんぱく質制限: 腎臓の負担を軽減するために過剰なたんぱく質の摂取を制限します。
○リン制限: 血管の石灰化を防ぐためにリンの制限が必要です。
リンには、“無機リン”と“有機リン”があります。リンがたまると血管が石灰化して硬くなってしまいます。 “無機リン”は食品添加物などに含まれており、“有機リン”は蛋白質に含まれています。 特に、無機リンは食品添加物などから知らないうちに大量に摂取している可能性があるため注意が必要です。 こちらも初期の段階では自覚症状はほとんどないため、定期的な血液検査によるフォローアップが必要です。2.薬物療法:
原因や病態、年齢等に合わせていくつかの薬剤を組み合わせて使用します。
○降圧薬: 高血圧を管理し、腎臓の負担を軽減します。
○血糖降下薬: 糖尿病患者には血糖値をコントロールする薬が使用されます。
○脂質異常症の治療: コレステロールを低下させる薬を使用して動脈硬化を抑制します。
○腎性貧血の治療: 注射薬や内服薬が病態に合わせて使用されます。
腎臓では赤血球をつくるのに必要なエリスロポエチンというホルモンがつくられていますが、腎機能が低下するとこのホルモンが必要量つくられなくなります。○骨ミネラルの治療: リン吸着薬やビタミンD製剤が使用されます。
腎臓にはカルシウムの吸収を促すビタミンDを活性化させる働きがあります。腎機能が低下するとこの機能が低下します。これにより、副甲状腺の機能が亢進し、骨が脆くなってしまいます。このバランスを調整するために、ビタミンD製剤やリンの吸収を抑制するリン吸着薬などを使用します。○カリウムの治療: カリウム吸着薬が使用されます。
カリウムの濃度が高くなると突然の心停止の危険性があるため、カリウムを吸着する薬を使用することがあります。○老廃物や毒素の治療: 活性吸着炭製剤が使われることもあります。
炭には有害物質を吸着する作用があるため、活性吸着炭製剤を服用することで、体にたまった老廃物や毒素を吸着して便として排泄させることができます。3.生活習慣の改善:
○禁煙や肥満の解消など、生活習慣の改善が大切です。
○夜は睡眠をしっかり取ることを心がけましょう。
○禁煙しましょう。
たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。これによって血流が悪化するため、腎機能が低下してしまいます。4.人工透析:(当院では透析治療は行っておりません)
○腎機能が著しく低下した場合、人工透析が必要になります。
☞<腎臓の働きについて> ☞<慢性腎臓病の原因について> ☞<慢性腎臓病のステージについて> ☞<慢性腎臓病の症状について>**慢性腎臓病(CKD)の症状**
CKDは段階的に進行し、腎機能の低下により体内に危険なレベルの液体、電解質、廃棄物が蓄積します。( ☞<腎臓の働きについて>)
— 初期 —
初期の段階では症状がほとんどないため、なかなか自分で気が付くことが困難です。 そのため、まずは以下の症状から疑ってみることことも大切です。
○夜間頻尿
腎臓の機能が低下すると、夜間に何度も排尿が必要になる「夜間頻尿」などの軽い症状が現れることがあります。 これは、健康な状態では腎臓が尿から水分を吸収して尿の量を減らし濃縮しますが、腎臓の機能が低下するとこの濃縮能力が失われ、結果として尿量が増えるためです。
○たんぱく尿
たんぱく尿は、尿中に通常では認めない蛋白質が見られる状態を指します。 腎臓が何らかの原因で障害をうけたときに発生しますが、たんぱく尿を認めたからと言って、必ずCKDと限ったわけではありません。 また、たんぱく尿のみでは自覚症状はほぼ認めません。 しかし、大量のたんぱく尿を認める場合は、排尿後の便器に非常に細かく、消えにくい泡が残ることがあります。また、健康診断などで、蛋白(±)や(+)等を指摘された場合はたんぱく尿を継続的に認めている可能性があります。 このような場合は、できるだけ早く、医師に相談した方がいいでしょう。
— 中等症 —
CKDのステージ3に該当します.。ステージ3はさらにG3aとG3bに細分化されます。 ステージG3a:(GFR値 45~59) この段階では、電解質バランスの崩れや日中の尿産生の低下、造血ホルモンの産生の低下などが起こり、むくみ、手足がつる、夜間頻尿、腎性貧血による疲れやすさや顔色の悪さといった症状が見られます。 ステージG3b:(GFR値 30~44) この段階でも、ステージG3aと同様の症状が見られますが、症状がさらに進行する可能性があります。 このステージでは、個人個人で症状が非常に異なります。血液検査では何らかの合併症を認め始めているものの、体調には変化がなく自覚症状を感じない方も多くいます。そのような場合、定期的に血液検査でしか、現在の病状を把握できません。 適切な間隔で検査を行い、食事療法や薬物療法の調節が必要になります。
— 高度~末期 —
CKDのステージ4.5に該当します。 腎臓の機能低下が進むと老廃物が体の中にたまって様々な症状がみられるようになります。 倦怠感・イライラ、思考力・記憶力の低下、かゆみ、吐き気、尿量低下、血圧上昇、息苦しさなどです。 ステージ4:(GFR値 15~29) 多くの場合、貧血やミネラル異常、骨の異常など腎臓機能低下によるさまざまな異常を伴います。 また、重篤な心血管疾患にかかりやすく、末期腎不全や心血管死亡の発症、死亡のリスクが高い状態にあります。